STORY 02 「KADOKAWAタテスクコミック」
立ち上げプロジェクト

コミック体験の
NEXT STAGE!
タテスクで、日本コンテンツの
楽しさを世界中に。

3人の編集者の視点から、プロジェクトの
これまでの軌跡とこれからの可能性を紐解きます。

プロジェクト概要

2021年8月、「KADOKAWAタテスクコミック」が誕生した。タテスクコミック(縦スクロールコミック)とは、Web上で縦にスクロールして読めるコミックのこと。スマホでサクサク読めることから、読者がぐんぐん増えている今もっともアツいコミックジャンルだ。数々の名作タイトルがカラーコミックとして生まれ変わっている点も人気の秘密で、新たな楽しさをファンに届けている。「BOOK☆WALKER」をはじめ、各配信サイトにて展開中。海外展開も準備中である。

タテスクコミック

色鮮やかなフルカラー&スマホで読みやすい縦スクロール形式で、いつでも気軽に豪華作品を楽しめる! 『文豪ストレイドッグス』、『やがて君になる』、『消えたママ友』などの人気作品に加え、タテスクコミックオリジナル作品も続々登場中。

MEMBER 01 MAYUMI NAKANO

コミック編集者 中野真弓

PROFILE:父の影響で幼い頃から本を読み漁る生活をしてきた。特に「浅見光彦シリーズ」(内田康夫 著)の大ファンで、聖地巡礼という言葉がなかった頃から、小説の舞台となった場所を訪れる旅を楽しんでいた。「人生で一度はやってみたかった」という書店員勤務の他、複数の出版社勤務を経て2012年、入社(当時、富士見書房)。「富士見L文庫」レーベルの立ち上げから従事。2020年よりタテスクコミック立ち上げプロジェクトに参加。

MEMBER 02 ASAKO SHIMIZU

コミック編集者 清水朝子

PROFILE:あちらもこちらもと興味のアンテナが伸びる性分で、学生時代には言語学を専攻しつつ16言語を履修した。就活では、「本の帯を作りたい」というコアな理由から出版社を志望。2011年、KADOKAWA(当時、メディアファクトリー)へ。営業部、MF文庫J編集部、児童図書編集部、海外事業推進部を経験した後、産休・育休へ。復帰すると同時に、タテスクコミック立ち上げプロジェクトに参加。

MEMBER 03 KIM WOO-JIN

コミック編集者 金 禹陳(キム・ウジン)

10代の頃に日本映画の魅力に取り憑かれる。自分も日本での暮らしを体験してみたいと来日を決意。独学で日本語を学んで、大学進学とともに日本へ。卒業後は自ら日本のコンテンツ産業に携わりたいと日本での就職を選択。2017年、KADOKAWAへ。海外アニメ部、海外事業局にて、海外の日本コンテンツファンと触れ合う仕事に従事した後、タテスクコミック立ち上げプロジェクトに参加。

「やりたい人間がやる」。
社内コンテストから
生まれた新規事業。

清水:タテスクコミックは、イノベーションプランコンテストという社内コンテストから生まれた新規事業です。私は育休中にコンテストがあるという話を聞きつけて、面白そうじゃん!といくつも企画を応募。そのなかの一つが、タテスクコミックでした。
ちなみにコンテストは、新商品/サービス開発だけでなく、マーケット開拓、業務改善、システム開発、組織づくりなど幅広いテーマで誰でも応募できます。選考を通過したプランには予算と人的リソースが投入され、実現に向けてプロジェクト化。その際は、起案者がリーダー。言い出しっぺが実行者というわけです。

中野:コンテスト応募当時、私は女性向けキャラクター文芸の編集者でした。韓国のイラストレーターさんとお仕事をする機会があり、海外事業を担っていたウジンさんの力を借りることも度々ありました。そんな縁もあって、「タテスクコミック事業で、一緒にコンテストに参加しない?」とウジンさんを誘ったんですよね。

ウジン:縦スクロール形式のコミックは韓国では早くから人気が出ていて、僕も、タテスクコミックには学生時代から馴染みがありました。日本でタテスクをやるなら早いほうがいいし、韓国出身の自分にも力になれることがあればと参加しました。当時は海外事業に所属していて海外と日本をつなぐ仕事も楽しかったのですが、以前から「コンテンツをつくる仕事もしてみたい」と思っていた自分にとってはチャンスでもありましたね。

中野:プロジェクト化が決まってから、「KADOKAWAタテスクコミック」レーベルをリリースするまでの約1年は、怒濤でしたね。

清水:新ジャンルの立ち上げですから、肝心の作品づくりに加えて、リサーチ、システム開発、ビジネススキーム開発とやることは盛りだくさん!

ウジン:紙媒体の創刊なら、既存の手法やアセットを用いることで短期間での立ち上げも可能ですが、Web発ということもあり、ゼロから検討していかなければならないことも多くありましたね。でも国内・国外のいろんな部署、いろんな人たちが力を貸してくれました。

誰もが“新しいこと好き”の
KADOKAWA。
新規事業に総力結集!

中野:たとえば、タテスクコミックを立ち上げる前にKADOKAWAがタテスクに参戦するよという意思表示の意味も込め、2021年3月に我々主催で『縦スクロール漫画大賞』というコンテストを開催したときのこと。社内に数あるコミック編集部にコンテストへの協力を依頼したのですが、全ての編集部が協力してくれました。じつはKADOKAWAの漫画賞で「オールKADOKAWA」なのは初めてなのです。

ウジン:「面白そうだったら自分もやってみよう!」という空気がKADOKAWAにはありますよね。新しいことをやりたいと思ったときに、あちこちから興味津々で参加してくれるのはKADOKAWAならでは。

中野:おかげで、オープンレーベルという方式もとれました。「私たちしかタテスクコミックをつくれない」のではなく、「どの編集部も参加できる」体制にしていて、すでにオリジナルタテスク作品を配信している編集部もあります。また、各編集部の協力により、アニメ化・ドラマ化されてきた作品を含め、数々の人気コミック作品のタテスクコミック化しています。フルカラー化で生まれ変わった作品の数々が、「KADOKAWAタテスクコミック」として続々と配信予定ですよ。国内配信だけではなく、海外配信を前提として考えているので、海外でも人気のある作品のタテスク化は、私たちにとって大きな軸のひとつでもあります。

清水:KADOKAWAグループ直営の電子書籍ストアがあることも追い風となりましたね。電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」とは密に相談をしながら、より良いタテスク制作・流通フォーマットの開発などをスピーディに模索することができました。
また、海外拠点や提携する海外スタジオの存在も、強力なエンジンになっています。例えば既存作品のタテスク化には、色を塗ったり、コマ割り・レイアウトを再構築したりという工程で分業が必要となることが多いのですが、KADOKAWAには国内外のグループ会社をはじめ、信頼できる国内外のスタジオさんと数多くのつながりがあり、さらに分業成果物のクオリティをコントロールする専任の編集者も配置しています。そういった面で、既存作品の漫画家さんや原作者さんから安心して作品をお任せいただくことができたため、たくさんの作品をタテスク化していくことが可能となりました。

ウジン:「KADOKAWAタテスクコミック」では、タテスク発のオリジナル作品開発にも力を入れていますが、その際、作家さんがKADOKAWAへ寄せる期待を実感しました。僕は、日本国内の新人作家発掘に加え、韓国など世界各国の作家発掘にも挑戦していますが、会ったことのない新人作家さんに声をかけるとき、「KADOKAWAのウジンといいます」と伝えると、それだけで信頼して話を聞いていただけるんです。KADOKAWAの名前は世界でも知られていて、ファンも多いんですよね。

タテスクは、ユニバーサル。
海外展開の大きな武器に。

清水:そんなタテスクコミックですが、海外市場との親和性もとても高いんです。日本のコミックは一般的に縦書き・右開きですが、海外のコミックは横書き・左開きですよね。では、日本の漫画の海外翻訳版はどうなっているかというと、右開きに横書きの翻訳テキストが入ります。外国の方々からすれば、視線と文字の向きが逆になるので、読むのに少し慣れが要ります。その点、タテスクコミックは、文字が縦書きでも横書きでも変わらずに上から下への視線移動なので読むコツをつかみやすい。タテスクコミックは、ある意味ユニバーサルデザインな仕様だと考えています。

中野:演出面でも、国や文化を問わないわかりやすい表現ができるんですよね。タテスクコミックは、漫画と映像の中間のようなコンテンツ。横開きのコミックは“めくる”という動作と、右上から左下に向かってコマを追っていくという作業が必要です。もちろん、それが効果的に使われてもいるのですが、縦スクロールコミックはスクロールするだけで誰でも同じ感覚で読めるので、自然な時間経過を演出することができます。だから地域を問わず誰でも、直感的に物語を楽しめます。

いくぞ、300作品。
世界一のタテスクレーベルに。

清水:「KADOKAWAタテスクコミック」の目標は、世界一のタテスク企業になることです。中期的にはKADOKAWA一社で年間300作品ほどのタテスクコミックが連載中となることを目指しています。簡単な目標ではありませんが、タテスク発のオリジナル作品を全力で開発することと、皆さんに愛されているKADOKAWAの大人気コミック作品をタテスク化する活動の両輪でKADOKAWAの総力をあげれば、年間300連載をお届けすることは決して夢物語ではないと思っています。

中野:現在日本国内で普及しているタテスクコミック、実は海外作品の翻訳版が多いんですね。日本人作家が手がけるタテスクコミックがとても少ない状況です。それも私たちは変えていきたい。私は日本の漫画は世界一おもしろいと思っていますので、日本発のコミック、日本人作家によるコミックを、もっともっとタテスク界に普及させ、日本中、ひいては世界中で読まれているという未来を叶えたいですね。

ウジン:僕は、タテスク発のオリジナル作品で、世界中の人を楽しませたいですね。その一番の近道こそが、「KADOKAWAタテスクコミック」だと思っています。北米圏で展開している「BOOK☆WALKERグローバル」でも、タテスクコミックの配信を準備中ですし、「台湾BOOK☆WALKER」ではもうまもなく配信が開始される予定です。その他にも「BOOK☆WALKER」を起点にアジア・欧州などの海外プラットフォーマーにも展開していこうと、全社をあげて奔走中ですから。

※記事内容は、取材当時(2021年12月)のものです。